さまざまなトレーニングが方向転換能力に及ぼす影響【論文レビュー】
陸上競技とフィールド競技の一番の違いは、急激な方向転換や相手の動きに合わせたリアクションがあるかどうか。方向転換能力はフィールド競技の選手にとって重要なスキルといえます。
今回の論文はさまざまなトレーニングが方向転換のパフォーマンスに及ぼす影響を調査したものになります。
原著はこちら↓
Effect of Different Physical Training Forms on Change of Direction Ability: a Systematic Review and Meta-analysis
さまざまなデータベースから方向転換をキーワードにして検索した4,669の文献の中から以下の基準を満たした研究を対象としています。
①トレーニング介入前後のパフォーマンスを測定するCODテストであり、テストの長さと指定された角度での方向転換回数について具体的な記述があること
②プライオメトリック、ストレングス、スプリント、特異的な方向転換トレーニング、または下肢を対象としたこれらのトレーニングの組み合わせなどのトレーニング介入を含むこと
③どのスポーツに参加したか、競技レベルなどのトレーニング背景、および詳細な方法論的記述があること
最終的に74の文献が今回の研究の対象として選択されました。
まず方向転換能力を決定づける身体的な要因を確認しておきましょう。大まかに分けると上図のようになります。
この中で、今回のターゲットとなるトレーニング要素は筋力、パワー、反応筋力、スプリントスピードとなっています。テクニックの部分に関してはさまざまなドリルを繰り返すことで、身体で覚えていきましょうという意味合いが強いかもしれません。
74の文献の中で用いられたトレーニング介入を分類すると以下のようになりました。
●プライオメトリックトレーニング
ドロップジャンプやカウンタームーブメントジャンプなど
●ストレングストレーニング
ハーフスクワットやデッドリフトやヒールレイズなど、もしくはそれらを行った後すぐにスプリントなどを行う
●特異的な方向転換トレーニング
シャトルラン、5-0-5アジリティ、Tドリルなど
●スプリントトレーニング
短い距離でのスプリントやさまざまな姿勢からのスプリントなど
●コンバインドトレーニング
ジャンプやスラロームなどの組み合わせ
結果としては、どのトレーニングにおいても大なり小なりパフォーマンスの向上が認められました。ただし、どのトレーニング形式が最適かは明確にはなりませんでした。
その理由としては、方向転換と一言にいってもその目的によって使われる能力も変わってくるからです。
例えば、上図のように切り返す方向によって求められる能力も異なってきます。角度が浅い時にはスピードが求められますし、深くなるほどより力も求めれてくるからです。
ストレングストレーニングはどちらかというと力を求められる方向転換に、スプリントはスピードが求められる方向転換に、プライオメトリックはリアクションタイムを高めてどちらの動きにも効果があると考えられます。
何を目的にするかによって効果も変わってくるので、個々のアスリートが抱えている方向転換の課題に対して取り組んで必要がありますね。
アジリティ系はさまざまなドリルがあるので、それらを組み合わせながら繰り返すうちに自然と動きを覚えていくという側面があります。
アジリティトレーニングはミニハードルやコーンなどいくつかの道具があると、とても幅広いトレーニングが可能になるので、こんな感じのセットを一つ持っておくととても便利です。
今回はフィジカル的な要素をターゲットにした研究でした。ただし、最初のフローチャートで説明した通り、テクニックの部分もとても大切になります。
・どちらの足をどこに置くのか
・上体をどのように傾けるのか
など身体で覚えていくことはたくさんあります。ドリルを繰り返すことで覚えていくのもいいのですが、それでは間違った動きを覚えてしまう可能性もあります。
実際に、間違った方向転換のスキルが身についてしまったことで膝をケガしてしまうということも考えられます。(私自身がまさにそうでした。。)
とにかく地面を強く踏めばいい
トップ選手の真似をして細かくステップすることを意識している
という方はリスクが高くなるので、正しいムーブメントスキルを身につけることも大切な要素の一つと言えるでしょう。
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